PC CASSETTE B PCカセットB

FANUCの11MでPCカセットが壊れたけれど修理できない原因

ここ1年ほどのあいだで、何度か11Mのカセット修理を依頼されROMの復元作業を行いました。うまくいったものもありますが、やはりダメなものもあって、その時は機械がちゃんと動かない。復元作業したあとでもラダーは正常に表示されるしパラメータもよさそうなのに、これを機械に取り付けたらまともに動かない。I/OのアドレスがONしてるはずがONしてないとか、ラダーでON状態に見えてつながってるはずなのに、そのアドレスのコイルも接点もONしないとか、謎な現象があったので、思い切ってカセットのROMを取り外してメモリを1チップ毎に状態を調べたところ、この意味不明の状況になる原因がなんとなくわかってきました。

11シリーズ特有のものかもしれませんが、これは設備によって変わってくるようです。こういう現象が発生する設備では、間違いなくPascalを使用しています。FANUC 11 シリーズでは、PMC用のデータをPCカセット内のEP-ROMに書き込んで使用しますが、ROMに書き込むときにPascal言語で作成したカスタム画面データなども合わせて書き込むようになっています。

ラダーとPascalでは、当然ながら同じメモリを参照したり書換を行ったりします。ROMチップ4個のどこかに、あるいは分散してラダーが記録され、どこかにPascalが記録され、どこかにメモリ管理情報が記録され・・・のように、正しく配置されたデータによって、相互干渉せずに機能するはずなのですが、どうも今回はそうなっていないようでした。

Pascal領域の設定とも関係しますが、どうも今回の故障ではラダーの領域ではなく、Pascal関連の情報かメモリ管理機能に関する情報部分のROMチップに、データ破損が発生していたのではないか、と考えられます。メモリチップは4個のうち1個がデータ読み取り不能になっていましたので、その時にいくつかの状況が起こっていました。(下記)

  • 故障したPCカセットからP-G(FANUCのプログラマ)へPascal領域を含めたデータを読みだした後、ラダーを表示させると、先頭からEND命令までが全て正常に表示される。
  • ラダー表示以外で設定が必要な(もしくは設定変更可能な)パラメータを表示させても、一般的な内容で設定されており、見た目には正常と判断される。
  • このデータを読みだした直後、同じカセットと照合をかけると必ずエラーになる。ただし、エラー番号はゼロで取説には記載されていないエラー状態。
  • 機械に取り付けると、NCは立ち上がるが、入力信号の状態が何やらおかしい。セレクタスイッチや押し釦などの既知のアドレスに対してON/OFF操作をしても、入力のON/OFFが確認できない。
  • ラダーモニタして、回路上またはI/Oの状態から判断してONするはずのコイル(Rアドレス)がONしない。

こういう謎の現象が発生して、当初はどこに原因があるのかわからず、取説にもそのような記載なく・・・その後の詳細は省きますが、結果的に機械を正常に動かすことはできませんでした。

Pascal領域のデータが記録されているROMチップが故障すると、まず100%復旧できません。機械メーカーで、11MのPascalデータを保存しているところも、ほぼありません。あっても提供してもらえません。つまり、Pascal関連のデータ破損は、設備の廃棄に直結します。

PCカセットのデータ破損が発生した場合、そのままの状態ではどのチップが壊れているかわかりませんので、手順を踏んで調査、対応していくしかありません。Pascal無しのラダーだけで機能している設備なら、ラダー図が残っていれば最悪でも手入力してラダープログラムの復元ができます。30年以上昔の機械は、これからどんどん故障して使えなくなっていくでしょうから、こういう設備はできるかぎり早めに更新したほうが良さそうです。

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